撮ってみよう
画面構成を考えて、野鳥作品に仕上げよう
2021/11/30

こんにちは、写真家の山田芳文です。

TAMRON BASEをご覧のみなさんに、野鳥撮影のハウツーとして、画面構成を考えて撮影することにより、仕上がりが変わってくることをご紹介させていただきます。

使用したレンズは、タムロンレンズ3本です。
■野鳥撮影にもっともおすすめのレンズ
150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD(Model A057)
■野鳥を風景的に撮る時におすすめのレンズ
70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)
■万能な高倍率ズーム
28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD(Model A071)
 

主役の配置場所を考える

主役である野鳥をどこに配置するかで、写真を見る人の印象は大きく変わってきます。私は通常、被写体の配置場所は次の3つにわけて考えています。

1、鳥が向いている方向にスペースを取る
これはセオリーで、通常は鳥が向いている方向にスペースを取るとおさまりが良くなることが多いです。2枚のヤマガラの写真をご覧ください。


ヤマガラ 使用レンズ:70-180mm F2.8 (Model A056)
焦点距離:155mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:125 使用カメラ:ソニー α7R IV


この写真は、ヤマガラが向いている方向の空間に余裕がないカットです。寸詰まりで、ヤマガラを大きく写しているわけではないのにもかかわらず、どこか窮屈な印象があります。

次に、ヤマガラが向いている方向にスペースがあるカットをご覧ください。


ヤマガラ 使用レンズ:70-180mm F2.8 (Model A056)
焦点距離:155mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/640秒 ISO感度:125 使用カメラ:ソニー α7R IV


上の写真は、ヤマガラが向いている方向に余裕があるため、写真を見る人の視線は自然と左から右へと誘導され、画面の右側の外の世界までも想像することができます。
 

2、鳥が向いている方向をつめる

セオリーと正反対の方法ですが、時と場合によっては、有効な画面構成になります。下のオナガガモの写真をご覧ください。この写真で見る人に伝えたい内容は、風も吹いていない静かな時間とその時間の経過です。セオリー通りにオナガガモが向いている方向にスペースを取ると、水面を泳いできた軌跡の配分が少なくなり、時間の経過が伝わりにくくなるので、進行方向をつめました。これによって、見る人は左から右へと泳いできていることがわかりやすくなり、写真に写っている前の時間までも想像することができます。セオリーは絶対ではないので、常に当てはめる必要はありません。セオリーと真逆にすることによって、写真で伝えたい内容が伝わりやすくなるのであれば、思い切って鳥が向いている方向をつめるのもひとつの方法です。


オナガガモ 使用レンズ:150-500mm F5-6.7 (Model A057)
焦点距離:500mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/1250秒 ISO感度:125 使用カメラ:ソニー α1

 

3、鳥を画面の真ん中に配置する

いわゆる日の丸構図で、良くない構図として語られることが多々ありますが、いついかなる時もよろしくないというわけではありません。下のヤマガラの写真は日の丸構図の典型例とも言えますが、次のような方法で狙うべくして日の丸構図で撮影しました。

➀ヤマガラが切り株の左端に止まって正面を向くと予想(期待)
➁ヤマガラが来る前に切り株の前にカメラを三脚で固定して、フレーミング
➂自分はカメラ位置から離れる
④ヤマガラが来て正面を向いた瞬間に遠隔操作でサイレント撮影


ヤマガラ 使用レンズ:28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)
焦点距離:61mm 絞り:F5.6 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:640 使用カメラ:ソニー α7R IV


切り株と画面左上の木の幹との位置関係、画面下の落ち葉の配分、画面中央上と右上の木漏れ日の丸ボケの配分など総合的に考慮して、この場合は日の丸構図が最適と判断しました。
 

主役の大きさを考える

基本である野鳥をほどよい大きさで撮ることは皆さん十分に認識していると仮定して、ここでは、それとは別の2つの方法をご紹介します。ひとつめは、はみ出し構図です。鳥を大写しするのですが、中途半端にせずに思い切って体の一部をフレームアウトさせるのが肝です。顔をアップで切り取ったアメリカヒドリをご覧ください。


アメリカヒドリ 使用レンズ:150-500mm F5-6.7 (Model A057)
焦点距離:500mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/500秒 ISO感度:250 使用カメラ:ソニー α1


この写真で伝えたいことは、アメリカヒドリの目力です。小さく写すと、それが伝わりにくくなるので、このように大胆に切り取りました。はみ出し構図で注意すべき点は、主役を端に寄せて、画面のどこか(この作例では右)に広めの空間を確保することです。そうすることで、見る人に窮屈な印象を与えずに迫力感を出すことができ、大切な内容(この場合は目力)を伝えることができます。

ふたつめは、ゆとり構図です。シジュウカラを小さく写した写真をご覧ください。


シジュウカラ 使用レンズ:70-180mm F2.8 (Model A056)
焦点距離:180mm 絞り:F4 シャッタースピード:1/100秒 ISO感度:640 使用カメラ:ソニー α7R IV


どのような姿・形をしているのか説明をするための写真であれば、シジュウカラをもう少し大きく写す必要がありますが、この写真ではシジュウカラの生息環境とその時の季節を伝えたかったので、主役の周囲も大きく取り入れました。また、背景を大きくボカしたのは、「背景の紅葉は何の木だろうか?」と写真を見る人に想像してもらうためです。
 

画面に変化をつける

写真が単調にならないよう、変化をつけるために「他と異なる目立つもの」を画面に少しの配分で取り入れることをおすすめします。特に順光や曇天の拡散光の時は、写真がいわゆる色ベタのような状態になりやすいので、変化をつけるアクセントを画面に取り入れることは大切です。次の2枚のコサギの写真を見比べてみてください。

この写真は、画面がコサギと草地のふたつの要素だけで構成されています。


コサギ 使用レンズ:150-500mm F5-6.7 (Model A057)
焦点距離:303mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:160 使用カメラ:ソニー α1


下の写真は、コサギと草地、そして、画面上に取り入れたシャドウの3つの要素で構成されています。


コサギ 使用レンズ:150-500mm F5-6.7 (Model A057)
焦点距離:257mm 絞り:F8 シャッタースピード:1/1000秒 ISO感度:160 使用カメラ:ソニー α1


主役のコサギが白く、日中の明るい時間帯に撮影した写真なので、画面を引き締める意味合いでシャドウ部をアクセントとして取り入れました。どれぐらいの配分で取り入れるかも重要で、シャドウ部がこれ以上多くなると、画面が重たいイメージになり、沈んでしまいます。この時は主役のコサギの配分や周りの草地の配分、画面全体の明るさなどを鑑みて、シャドウの配分を決定しました。


いかがでしたでしょうか。今回は習得にあまり時間がかからない画面構成をメインに、野鳥を作品に仕上げる方法をご紹介させていただきました。
確かな解像力と柔らかなボケ味が特徴のタムロンのレンズを使って、皆さんも野鳥撮影にチャレンジしてみてください。


終わりに ~12月以降に見られる野鳥~
今回の記事で紹介したヤマガラやシジュウカラは、都市部の公園でも生息しています。落葉する冬は見つけやすくなりますので、探してみてください。池や湖などの水辺では、浅いところでコサギなどのサギ類が獲物の魚やエビを狙っているところを観察することができます。

また、12月になると、オナガガモなどカモ類も数が増加してきます。特別な大自然に行かなくても、身近な水辺でカモたちの姿を見つけることができますので、ぜひ一度探してしてみてください。
 

写真家プロフィール

 
    野鳥写真家 山田 芳文

「100種類の鳥よりも1種類を100回」をモットーに野鳥を撮り続ける。ライフワークは鳥がいる風景写真。著書は『写真は構図でよくなる!すぐに上達する厳選のテクニック23』(エムディーエヌコーポレーション)、『野鳥撮影術』(日本カメラ社)、『やまがら ちょこちょこ』(文一総合出版)など。最新刊は『SONY α6600 基本&応用撮影ガイド』(技術評論社)
 

公式ブログでこの写真家の記事を見る

 

今回ご使用いただいたレンズ

■タムロン70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)

2020年5月発売。フルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用大口径望遠ズームレンズです。軽量コンパクトサイズで、高速・高精度なAFと妥協のない高い解像性能で被写体をとらえます。また、最短撮影距離は大口径望遠ズームレンズとしては驚きの0.85mを達成しており、撮影表現の幅を広げます。
70-180mm F2.8 (Model A056)製品ページ

■タムロン150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD (Model A057)

2021年6月発売。フルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニーEマウント用望遠ズームレンズです。望遠500mmを確保しながら、手持ち撮影を可能にする小型化を実現しています。静粛性・俊敏性に優れたリニアモーターフォーカス機構VXDや手ブレ補正機構VCを搭載。特殊硝材を効果的に使用し、超望遠500mmの世界を、高画質な描写性能とともに手軽にお楽しみいただけます。
150-500mm F5-6.7 (Model A057)製品ページ

■タムロン28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXD (Model A071)

2020年6月発売。F2.8スタートの、フルサイズミラーレス一眼カメラ対応のソニー Eマウント用高倍率ズームです。広角端28mmから望遠端200mmを1本でカバーする便利さに、“開放F2.8”と“高画質”という魅力が加わり、写真表現の幅や楽しさが広がるレンズです。
28-200mm F2.8-5.6 (Model A071)製品ページ

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